エッセイ「街の大衆食堂 昭和の景色」

 akiramaの日々のいろいろなエッセイ

byPixabay mouth-watering-2067801 給料日後は焼肉定食だった若いころ

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「街の大衆食堂 昭和の景色」

一膳めしやとか大衆食堂と呼ばれる街の食堂。白い暖簾がかかっていて、〇〇食堂などと書かれている。食堂には、定食や丼に麺類もあるが、基本はできあいのおかずを取ってきて席に着き、ご飯の大中小と味噌汁を注文する。このスタイルが、今も変わらず残っている場所だ。

駅前には必ずこの手の食堂があったが、駅の再開発などで少なくなった。生き残っているのは、意外や大都会のオフィス街の一角。昼ご飯はこれでしょうとばかりに繁盛している。あとは、商店街や市役所などの行政関連の建物が多い場所。まだまだ、元気な食堂が、おいしい昼ご飯を提供している。

高速道路網が整う前の時代。昭和40年代くらい全国は、国道で結ばれていた。国道筋には、のこの手の食堂が多くあり、トラックがたくさん止まっている食堂は、その地の名物食堂だった。高速道路ができていくと国道の交通量は大きく変化をして、有名な食堂も歴史を閉じていったが、懐かしく思い出す。

若い頃、仕事で外回りをしていたが、行先に応じて昼めし場所があった。時間をかけずにサッとは入れて、安くてうまく、さらにお腹いっぱいになるところは、一膳めし屋だ。店に入るなり、「めし大、味噌汁」と注文しながらおかずを取っていく。待たなくてよく、飯はすぐに来る。だから、すぐ食べれるというのはかなりポイントが高い。回数を重ねると、その店のうまいものがわかるようになり、楽しみにもなった。同じような外回りのサラリーマンが多くいた。最近は、大衆食堂も少なく出先での食事はたいへんだろう。

朝早くから夜遅くまで営業の店や、お昼時だけの店もある。駅前や商店街のお店では、ビールなどのお酒がおいてあるのも普通で、休日の昼酒が楽しめる。昼酒は、少々と思いながらも罪悪感と優越感の混じった複雑さながらも、これがうまい。だいたいが、できあいのおかず類は、肴になるものばかりだ。刺身や酢の物におでんと来れば、どうしてもビールを頂きたくなる。土日の楽しみだ。

絶対に美味い、あなご玉子丼

絶対に美味い、あなご玉子丼

ご贔屓の店は、明石港にある。淡路島との連絡船の乗り場前で、歴史も古いお店だろう。鉄道ではないが、駅前食堂だ。2軒並んで食堂があるが、その1軒がお気に入り。

朝は、7時から夜まで営業していて、平日と休日は客層が違うように見える。たまに出かけて土曜の午後を過ごすと、同様な方がいらっしゃるものだ。基本は食堂だから、お腹いっぱいに食べながら気楽な時間を過ごす。

この食堂には名物がある。「あなご玉子丼」と「あなごの玉子とじ」だ。あなごを入れた玉子丼なれど、少し濃いめのだし汁に旨味の効いたあなごとふんわりたまごで、ご飯もお酒もグイッとここでペースが上がる。日曜日は、これを食べに地元でない方も来られる。

タコが入っている出汁巻 ご飯に乗っけるとたまらない

タコが入っている出汁巻 ご飯に乗っけるとたまらない

あなごの玉子とじ 濃い目の味付けが、色を誘う この鍋の歴史はいかほどか

あなごの玉子とじ 濃い目の味付けが、色を誘う この鍋の歴史はいかほどか

あなごの玉子とじ、この器はアルミの鍋だ。まだ、存在するのかと思うような使いこまれたアルミ打ち抜きのような鍋だ。鍋焼きうどんを食べていないが、たぶん、この鍋だろう。この鍋が「どうも……」と思うならこういうお店はやめた方が良いかもしれない。

定番のおでん いや関東煮だ 牛筋はうまいし大根も厚揚げも好物

定番のおでん いや関東煮だ 牛筋はうまいし大根も厚揚げも好物

中華そば ラーメンではなく、大衆食堂の中華そば

中華そば ラーメンではなく、大衆食堂の中華そば

おでんは、寒い時期の定番だし、コンビニの懐石料理のようなミニおでんと違いドカンと大振りだし、タコや魚卵の煮つけも明石らしいし、タコ入りの出汁巻きもある。そして、大衆食堂独特なのは、「中華そば」決してラーメンではなく、中華そばだ。どうなのかと言えば、出汁はそばうどんと一緒で、豚肉を入れて肉の旨味と脂分が出て出汁になり、そばはいわゆる中華そばの麺。これが、あっさり味でうまく、ほぼ、食堂の中華そばは共通で、この味。

春にはこんなしゃれた わか竹煮に魚卵も入る

春にはこんなしゃれた わか竹煮に魚卵も入る

明石のタコ ご当地のうまいもの

明石のタコ ご当地のうまいもの

関西は、蕎麦屋で一杯飲む習慣が少ないのか、蕎麦屋さんには一品ものが少なく、ひたすらそばを食べるようになるが、関東の蕎麦屋さんは、多くが居酒屋要素がある。蕎麦屋ならではの一品が多く、天ぷらから刺身まで用意している。一流の店は一流なりの肴があり、街の蕎麦屋もいろいろある。

しかし、この一膳めし屋の風景は、関西が色濃くありそうだ。だから、おでんというよりも関東煮(かんとだき-「う」はなく炊ではない)だろう。春夏秋冬楽しめる。

昭和の色濃いお店、そう簡単にはなくならないだろう。世の中のすべてがショッピングモールに入ってしまうことは考えられないし、街のすべてがカタカナになってしまうこともないだろうが、それでも数は減るかもしれない。お店は大きくもないところが多いので、家族連れで行くようなものでもないだろうし、ひとりでふらりと入ってが一番かもしれない。でも、うまい安いにホッとするのは間違いない。

帰りは、明石駅から山陽電車のガラガラに空いた、インバーターってなにそれっ?の古い車両の各駅停車にのんびり乗ると、令和も平成も飛び越え昭和に戻る感じがする。

思いついたこと、日常でのちょっとしたこと、日々の出来事などをmini版で書いています。何気なく生活していると、心躍ることや残ることが出てくるもので、それを文字にしてみたく始めました。